Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO (2012-13年秋冬東京コレクション)で、バックステージメイクアップをメイベリン ニューヨークが担当したファッションブランドのデザイナーへのインタビュー。

まるで朝もやの中に浮かび上がってくるように、スモークに煙るランウェイをモデルが歩いてくる。薄明かりの照明にきらめくのは、ホログラム・フィルムを多用したジャケットやコート。未来的な素材とフォルム、そして壮大な音楽に、SF映画のワンシーンを見ているような非現実的な気分になる。
「ショーでは服一点一点より、僕が頭の中で描く世界観を見てほしかった」
ショーの後にそう語ったデザイナー・中里唯馬が掲げた今コレクションのテーマは「ユートピア」。前シーズンから続くこのテーマにおいて、彼は都市と自然の融合を表現した。
「コレクション全体のカラーパレットでは、ホログラム・フィルムのブルーで地球を、レザーの黒で宇宙を、そしてシルクストレッチやニットのピンクベージュでスキンカラーを表しました」
デザインにおいては、常に自然の造形物へのオマージュを意識しているという。ゆえに、自然を意識したカラーリングだけでなく、流木を使ったアクセサリーもスタイリングの中で強い存在感を放っていた。
「都市と自然の融合」というコンセプトに加え、現段階でのYUIMA NAKAZATOを語る上で欠かせないのがジェンダーだ。
「ウィメンズファッションの身体アプローチを、構築的なメンズファッションにいかに取り入れるかということに興味があるんです」
今コレクションにも、既存のメンズファッションの概念を超越したスタイルを提案。身体のラインを意識させるシルクジャージのロングスカートや、ウエストシェイプしたロングコート、ハイネックにパフスリーブのトップスなどのアイテムが印象深い。
そんなふうにファッションに表現された2つの性の融合は、メイクアップにも反映。凛々しく描かれた眉。ホログラム・フィルムのように光と色を反射するアイシャドウ。YUIMA NAKAZATOの世界観に合わせ、メイベリン ニューヨーク専属 メイクアップディレクターのMIZUがマスキュリンとフェミニンが同居する新しい美を描いた。
今回、Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO初参加で強烈なインパクト残したYUIMA NAKAZATO。先のことを問われると中里は「まだ具体的には見えていませんが」と前置きしてから、「ランウェイにはこだわっていません」と、独自のスタンスを見せた。
「ただ、これからもメンズにウィメンズの要素を取り入れたファッションへの挑戦は続けて行くと思います。メンズだけど、女性にも着てもらえたらうれしいですね」

7年間、ジャン・ポール・ゴルチエのもとでキャリアを重ねた中島篤が、今シーズンついに自身の名を冠したブランドでデビューした。
「これまで何十回ものショーをスタッフとして見てきましたが、それと自分のコレクションとはまったく違う。本当に大変でしたが、満足いくショーができました」
初ということもあり、かなりの点数で構成されたコレクションは、スーツから始まり、フーディやライダースジャケットなどのカジュアルウェア、そして最後のオートクチュールドレスまで、どれも高いテイラーリングの技術を感じさせる美しいフォルム。「デビューとは思えない完成度で、ファッションとメイクアップが高め合うことができた」と、メイベリン ニューヨーク専属 メイクアップディレクターMIZUがコメントしたように、完璧な美しさがランウェイを飾った。
今回「ネオ・クラシック」を掲げて展開したコレクションは、ブランドコンセプトである「直線美」「曲線美」「伝統美」の3つをさまざまな形でデザインに落とし込んでいる。たとえばテイラードスーツやトレンチコートといったクラシカルなアイテムのシャープなシルエット。その一方で、「日本の和服からインスピレーションを受けて、一枚の布をベルトで締めたときに自然に生まれる曲線美を表現した」というドレスなど、動きに合わせてゆったりと身体を包むやわらかなラインも印象的。
「今回は『古典的な美しさの復活』をテーマにしましたが、素材の光沢感や、近代建築からアイディアを得た切り替えの面白さなどで、新しさをプラスしました」
ジオメトリックな切り替え、モザイクのようにちりばめられたミラー加工のレザーパネルなどは、一見奇抜ともいえるデザイン。しかしそれがオーセンティックなアイテムと融合し、ネオ・クラシックという新しいスタイルが生まれた。
「アヴァンギャルドに見えるけど、実はクラシックというのがゴルチエ。その影響はやはり受けていると思います。そして何より意識したのは目の前で見てきた質の高い服づくり。今回、自分が得意とするパターンやカッティングにこだわり、シンプルだけど美しい服を目指しました」
ゆくゆくは海外でも活動したいと意欲を見せた中島。デビューコレクションで見る人を圧倒した完成度の高いクリエーションは、すでに国内外から熱い視線を注がれている。

ブランド名が表すように「温度」をテーマにした作品を発表しているA DEGREE FAHRENHEIT。2011-12A/Wではドライアイスの融点を、2012S/Sではニホンバチが天敵スズメバチを取り囲む「蜂球」の内部温度をテーマにコレクションを展開した。
温度が表す事象からイメージをふくらませデザインに落とし込むデザイナー・天津憂が今回のコレクションに選んだ温度は、23°F(-5℃)。耳慣れない「SLOW FREEZING(緩慢凍結)」の温度だった。
「テーマを考えていた時に、まずQUICK FREEZING(急速凍結)を調べたんですね。それで反対語はなんだろうと思って見つけたのがSLOW FREEZINGでした。形や鮮度を保つための急速凍結と異なり、緩慢凍結した食品は味もそこなわれ、形も崩れる。そんなバランスの悪さ、不安定さがデザイン・コンセプトなんです」
たとえば、A DEGREE FAHRENHEITらしいドレープやダーツがいっそう大きくたゆたう様。コンパクトでシンプルなシルエットのドレスの首元を包むボリューミーなファー。ゆっくりとしたモデルの歩きに合わせて気ままにたなびくアシンメトリーなカッティングの裾。
「素材においても、プリントのグラデーションやムラ感のあるウールで、アンバランスさを表現しました」
そんなふうに、緩慢凍結からインスパイアされた「アンバランスな美」を服に追求した彼が、もうひとつこだわったのが「-5℃という温度を“寒さ”ではなく“冷たさ”で表現したかった」ということ。そのこだわりは、氷の割れる音を効果的に使ったサウンド、硬質な白い光が照らしたランウェイから感じることができる。
「最初にテーマを聞いたときから、メイクアップもそういった冷たさを表現しようと考えていたんです」とは、メイベリン ニューヨーク専属 メイクアップディレクターのMIZU。デザイナーに提案したのは、洗練されたクールビューティを演出するスモーキーなアイメイクに、氷の輝きを思わせるシルバーのアイシャドウをワンポイントで入れることだった。
「一緒にショーに向けて取り組んでいて、ひっかかるものが一緒だなと感じていたので、MIZUさんのセンスにお任せしました。結果、服とメイクアップがとてもいい関係のショーになったと思います」
ショーを終えた天津に、一番気に入っているデザインを訊ねた。
「やっぱり、全部が並んだときの空間そのものですね」

「今回のコレクションは、世界各国のVOGUE編集長たちにインスパイアされたものです。写真で見た、彼女たちがファッションをとことん楽しむ姿に感動して、パワフルな女性像を表現したいと思ったんです」
デザイナー・小野原誠のその言葉どおり、オープニングはイエローやレッドといった強い色のレザーのワンピースやコートで、アクティブで洗練された大人の女性の雰囲気をアピール。これまでのファンタジックでアンリアルな世界観から一変、motonari onoの新しい一面を感じさせるものだった。
「レースやフリルが作る美しさを表現するのには自信があるし、motonari onoといえばそういったイメージが定着したと思います。そこから僕自身、新しいことをやってみたかったし、今回参加してもらったスタイリストさんからもアドバイスを受けて、これまでの“らしさ”をそぎ落としていきました」

もちろん、ディテールには“らしさ”も健在だ。フェティッシュな魅力をアピールする大胆なジッパーやコルセットのようなレースアップ。ショーの後半には、レースがふんだんに使われたドレスや、フラワープリントのアイテムも登場した。
「今回はレースやプリントのアイテムにも、カフスや襟など一部に必ずレザーを使っているんです。それによって、使い慣れた素材にも新しい表情を見つけることができました」
そんな、“らしさ”と“新しさ”は、メイクアップでも表現。前シーズンに引き続きメイクを担当したメイベリン ニューヨーク専属 メイクアップディレクター MIZUは、「どこかにこれまでのテイストを取り入れたかった」と、セミマットな肌に眉はコンシーラーで薄く抑え、ベースメイクを無機質な印象にしながらも、そのなかにダークカラーのリップで強さを、ほんのりしたチークでフェミニンさをプラスした。
「今回のインスピレーション源である、各国のVOGUEの編集長たちの姿から、もうひとつ僕が感じたのが『日本のファッションももっとがんばらなきゃ!』ということ。もっと自分でも発信していかなくちゃと思うんです」
それは、今回も日本のレザーを使用しているように、日本の素材の素晴らしさを世界に知らしめたいという思い。また、もっと今の日本のファッションに注目してもらいたいという思い。
「毎シーズン新しいことに挑戦し、技術も積み重ねているので進化は当たり前ですが、もっと先に進んで行きたいし、いつかmotonari onoが『日本人が作るモード』、そんな位置に行けたらいいなと思っています」

「楽しんでいただけました?」
ショーが終わるなり、集まったプレスにニコニコと問いかけた荒井沙羅。「この時間を共有して、心に何か感じてもらえたら」。そんな彼女の願いが込められた東京での最後のショーは、チェロ・ピアノ・尺八からなるユニット、「古武道」のライブ演奏に彩られ、araisaraからのスペシャルな贈り物のような時間だった。
「古武道のみなさんに音楽をお願いしたのは、日本の伝統を大切にしてそれを世界に発信するという活動をされているから。ファッションと音楽とスタイルは違えど、私と同じ思いを持っていると思ったからです」
これまでも、日本の伝統的な技法をモードに落とし込み、独自のスタイルを提案してきたaraisara。今シーズンは、これまでの6シーズンで職人と共に積み重ねてきた染めや織りの技をベースに、剪紙や濡れ書きなど、日本と中国の両国においてそれぞれの様式で使われている伝統的な手法を組み合わせ、伝統をモダンに表現した。テーマは「阿那曲」。楊貴妃作と伝えられている詩のタイトルだ。
「詩の内容ではなく、楊貴妃という存在がテーマでした。araisaraが千年以上も語り継がれてきた彼女のような存在になっていくには、ただ着心地がよい、美しい、流行だというだけではダメ。洋服という媒体を使って、伝統を今に表現し、未来に伝えるという独自の役割をどこまで追求できるかと考えたのが、今回のコレクションだったんです」
また、デビュー時から提唱してきたのが、自由に何通りにも着こなせる「九十九式」というスタイル。今回も、20以上ものルックを生み出していたのはたった1着のパターンだった。
「着方によって、着る人によって、洋服はその様を変えます。袖に袖を通さなくても、前と後ろを逆に着てもいいんです。考え方を変えて、形にとらわれなければ、どんどん新しいことができる」
そんな彼女のクリエーションを最大限にひき立てようという思いで、メイベリン ニューヨーク専属 メイクアップディレクターのMIZUが挑戦したのは「メイクアップしない勇気が必要だった」という究極にミニマムなメイクアップ。
「着る人本来の魅力を輝かせるというのは、化粧も同じ。質感と光の微妙な調整で、モデルひとりひとりの透明感を引き出ました」
洋服に秘められた無限の可能性。それを私たちに見せてくれたaraisaraの第二章は、次のシーズン、パリで幕を開ける。
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MIZU INTERVIEW
バックステージメイクアップを担当した、
MIZUへのインタビュー。 -
MAYBELLINE NEW YORK
From Catwalk to Sidewalk.メイベリン ニューヨーク について













